1)薬の名前
抗がん剤治療薬(商品名ヴォトリエント錠)
薬価は200mg(1錠)約4,200円です。
※保険適用されます。
ヴォトリエントは、悪性軟部腫瘍に適応を有する、初めての分子標的治療薬である。
□分子標的治療薬とは、従来の抗がん剤は、がん細胞そのものを標的としたものではなく、がんの特徴である分裂をくり返して増殖している細胞を攻撃する薬でした。このため、正常な細胞(特に、分裂がさかんな骨髄の細胞など)も攻撃してしまい、副作用も多く出てしまうというデメリットがありました。
これに対して分子標的治療薬とは、がん細胞が持っている特定の分子(遺伝子やタンパク質)をターゲットとして、その部分だけに作用する薬のことです。
しかし、正常細胞に全く作用しないわけではなく、一部、重い副作用が起こることも報告されています。
- どの病気にどのように効くのか?
悪性軟部腫瘍、根治切除不能又は転移性の腎細胞がんに効果があるとされています。
古くから使用される抗がん剤は細胞増殖の速い細胞をターゲットにしていました。しかし、正常細胞の中にも腸管細胞、生殖器細胞、髪の毛の細胞など、増殖速度の比較的速い細胞は存在します。これらの細胞に対しても、大きな毒性を与えてしまうことが大きな問題となります。
そこで、がん細胞だけに特徴的な機構を狙い撃ちすることでがんを治療しようと考えられた薬が分子標的薬です。
体には、細胞増殖に関わるシグナルが存在します。このシグナルが活性化することで「細胞増殖を行うための指令」がずっと放たれるようになれば、無秩序な細胞増殖が起こるようになります。このような機構に関わる重要な酵素として、チロシンキナーゼが知られています。
ヴォトリエントは細胞増殖に関わる複数のチロシンキナーゼを阻害します。例えば、血管を新しく作る過程に重要となる物質があります。
がんは際限なく分裂を繰り返して増殖するため、その分だけ栄養が必要です。そこで、がん細胞は新たに血管を作り、自分のところへ栄養を効率的に引っ張ってくるようにします。これは、がん細胞で「新たな血管を作るように指令を出す物質」がたくさん放出されているためです。
そこで、「新たな血管を作るように指令を出す物質」の作用を阻害すれば、がん細胞の増殖を抑えることができるようになります。このような考えにより、ヴォトリエントはがんを治療します。
□チロシンキナーゼとは、たんぱく質を構成するアミノ酸の一つであるチロシンにリン酸を付加する機能を持つ酵素。プロテインキナーゼの一種。細胞の増殖・分化などに関わる信号の伝達に重要な役割を果たす。遺伝子の変異によってチロシンキナーゼが異常に活性化すると、細胞が異常に増殖し、がんなどの疾病の原因となる
- いつ、だれによって発明されたのか?
イギリスのグラクソ・スミスクライン株式会社によって開発され、2012年に日本で承認された。
現在日本での製造会社は、グラクソ・スミスクライン株式会社、ノバルティスファーマ株式会社の2社。
4)具体的な治療方法と期間
ヴォトリエントは、経口剤(飲み薬)で、1日1回、食間(空腹時)に服用。食前や食後は避け、食事の1時間以上前または食後2時間以降に服用。1回の服用量は通常800mg(4錠)です。
1週間又は2週間に1回外来にて、血液検査、尿検査を行い、定期的にCT検査などにて経過を見ます。
- 痛みや副作用
副作用は、下痢、食欲不振、吐き気、嘔吐、腹痛、高血圧、徐脈、毛髪変色、脱毛、皮膚乾燥、発疹、皮膚脱色、粘膜炎、関節痛、筋肉痛、発声障害、頭痛、めまい、味覚異常、疲労、体重減少。
重い副作用では肝機能障害、高血圧クリーゼ、心不全、不整脈、血栓塞栓症、消化管穿孔、甲状腺機能障害、ネフローゼ症候群、感染症、間質性肺炎、可逆性後白質脳症症候群、血栓性微小血管症、網膜剥離、膵炎が報告されいます。
下痢や吐き気など胃腸症状が半分以上の人にあらわれます。
高血圧の発現率が、特に日本人で高いようで、こまめに血圧測定をおこなうなど血圧の管理が重要です。
グレープフルーツジュースは血中濃度が上昇し、副作用がでやすくなるから飲んではいけません。
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