1)薬の名前
抗がん剤治療薬(ヨンデリス)
薬価は1mg約195,000円です。
※保険適用されます。
ヨンデリス(商品名)は、トラベクテジンと言う抗がん剤で、Ecteinascidin 743(エクテイナシジン743)あるいはET-743としても知られている。
ヨンデリスは、悪性軟部腫瘍の治療薬として日本、アメリカ、ヨーロッパ、ロシアなどで承認されている。また、乳癌、前立腺癌、小児肉腫に対する治験が行われている。ヨンデリスは欧州委員会とアメリカ食品医薬品局から軟部肉腫および卵巣癌に対する希少疾病用医薬品として認められている。また日本でも「染色体転座を伴う悪性軟部腫瘍」の希少疾病用医薬品として認められている。
□悪性軟部腫瘍とは、骨、軟骨、脂肪、筋肉、血管等の非上皮性細胞由来の結合組織細胞に発生するがんである。
□希少疾病用医薬品とは、特定疾患などの薬物療法で必要性が高いのにもかかわらず、患者数が少ないため、製薬会社の採算が取れない処方箋医薬品のことである。
- どの病気にどのように効くのか?
悪性軟部腫瘍に効果があるとされています。
ヨンデリスは、DNAに結合することでヌクレオチド除去修復機構を阻害します。これにより、がん細胞の細胞死(アポトーシス)を誘導することで腫瘍細胞の増殖を抑えます。
DNAを構成するものとして、ヌクレオチドと呼ばれるものがあります。ヨンデリスは、DNAに結合するため、言い換えれば「ヌクレオチドにくっつく作用がある」といえます。
ヨンデリスによって、ヌクレオチドが障害されていることで正常に働かないとき、DNAを修復しようとします。これを、ヌクレオチド除去修復機構といいます。
□ヌクレオチド除去修復(Nucleotide excision repair)は、生体に備わっているDNA修復機構の一つで、紫外線により生じるチミンダイマーや種々の化学物質によりDNA中に生じた損傷を修復する。塩基除去修復(BER)よりも大きなDNA損傷を認識し、除去・修復する。省略してNERと呼ばれる。
- いつ、だれによって発明されたのか?
ヨンデリスは、カリブ海産ホヤの一種Ecteinascidia turbinata (エクテインアシジア・トゥルビナータ)から単離された3つのテトラヒドロイソキノリン環を有するアルカロイド化合物であり、スペインのPharma Mar社により創製されました。
海外では「アントラサイクリン系薬剤およびイホスファミドに無効、またはこれらの投与が適さない進行悪性軟部腫瘍」に対する適応で2007年9月にEUで承認されて以降、2015年10月までに世界78カ国で承認されている。
日本では、ベストサポーティブケア(BSC)群とのランダム化国内第2相比較試験が実施され、BSC群に比べて無増悪生存期間を有意に延長するなど高い有効性が認められた。2011年6月には希少疾病用医薬品として指定を受けている。
2015年9月に悪性軟部腫瘍を適応症として、大鵬薬品工業株式会社が、製造販売承認を取得しました。
現在日本での製造会社は、大鵬薬品工業株式会社の1社。
4)具体的な治療方法と期間
ヨンデリスの投与は、24時間の持続点滴で行います。
しかし、投与中に薬が血管の外に漏れてしまうことを防ぐ目的で、腕の静脈ではなく、中心静脈という太い血管に点滴します。
中心静脈へ点滴するためには、カテーテルまたは、ポートを留置する必要があります。
投与期間は、通常3週間(21日間)を1サイクルとして行います。
1日目にヨンデリスを24時間かけて投与して、その後少なくとも20日間お休みします。
これを繰り返し行い、その後、血液検査、CT検査等の画像にて、治療の判断をします。
- 痛みや副作用
副作用は、悪心、好中球減少、白血球減少、食欲不振、倦怠感、便秘、嘔吐、血小板減少、貧血、口内炎、下痢、味覚異常、頭痛、筋肉痛が報告されいます。
重い副作用では、肝不全、肝機能障害、骨髄抑制、横紋筋融解症、重篤な過敏症、感染症、心機能障害が報告されいます。
□横紋筋融解症とは、骨格筋の細胞が融解、壊死することにより、筋肉の痛みや脱力などを生じる病態をいいます。その際、血液中に流出した大量の筋肉の成分(ミオグロビン)により、腎臓の尿細管がダメージを受ける結果、急性腎不全を引き起こすことがあ
ります。また、まれに呼吸筋が障害され、呼吸困難になる場合があります。
横紋筋融解症は多臓器不全などを併発して生命に危険が及んだり、回復しても重篤な障害を残したりする可能性のある危険な副作用です。すみやかな対応(服用中止、輸液療法、血液透析など)により腎機能の保護をはかり、回復の可能性を高める必要が
あります。
グレープフルーツ、セント・ジョーンズ・ワート(セイヨウオトギリソウ)は、ヨンデリスの効果に影響する可能性があるので、治療中は摂取を控えてください。
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